細野不二彦『さすがの猿飛』最終巻
漫画の最終巻としては、
この『さすがの猿飛』弟7巻が最高だと思う。
特に好きなシーンの台詞だけを厳選して抜き出してみたんだけど、
『GU-GUガンモ』の最終話のように台詞だけでその良さを伝えるのは無理そうだ。
絵がないとこの良さは伝わらない。
この最終巻は、最初のエピソード以外は一つのシリーズとなってて、
最終巻を最初から最後まで読んだ方が絶対に面白い。
コメディタッチで始まる物語が少しずつシリアスさを増していき、
最後の2話で一気にクライマックスにもっていく展開は、
今読み返してもやっぱり面白い。
アニメしか見たことがない人は、
できれば第6巻から読んでほしい。
魔子
けど強すぎて、ときどきあたしの手の届かないところへいってしまうんじゃないかって、思うことがあるわ。
・・・・・・
すっごく強くなりたいの!そう、肉丸くんとおんなじくらい…!
美加
またきてんのかい…
ムダだぜ、いくらまったって、あいつら二度とここにもどってくる気配はねえって。
肉丸
でもなにか手がかりになるよーなモノを、残してるかもしれないからねっ!
美加
……そだな…
ほれ…
肉丸
うーん!
美加
どうした?食いなよ肉丸。
肉丸
うん…
美加
大丈夫、魔子はきっと無事にしてるって。あいつ、あれで気丈な娘だからさ…
肉丸
うん…
美加
おまえここんとこロクにモノ食べてないんだって?
ムリもねえ…魔子のお袋さんでさえ、めげて寝込んでるくらいだからな。
肉丸
うん…
美加
つらくってあたりまえさ!
肉丸
うん…
美加
落ちこんで泣いて暮らせばいいことじゃんか!
なのにどうしておまえってヤツは、そんなにふんばりがきくんだよォ…
肉丸
うん…
幻十郎
いまやおまえは猿飛肉丸を超え、史上最強の忍びなのじゃぞ!
・・・・・・
魔子
あたしは彼と同じくらい強くなりたかっただけ…
彼がどこへいこうとついていけるあたしでいたかっただけ…
八宝斎
どうもわしは先を越されそうな気がしてならんのじゃ。あやつに……
あやつがまた、井戸に落ちた魔子ちゃんを命からがら助けあげてくれるような……
そんな気がしてならんのじゃよ…
肉丸
帰ろうね。魔子ちゃん。みんなまってる。
魔子
あたしときて。あたしの妖ノ者学院へ。
肉丸
校長先生も、おばさんも、
魔子
あなたと戦いたくないの。あなたに勝ちたくないの。
肉丸
美加ちゃんも、小太郎さんも、服部くんも。うちのダディも、マミィも、じっちゃんも。
魔子
お願い!あたしのいうことを聞いて!!
肉丸
このぼくもまってる!!
肉丸
何度やっても同じことさ。
しょせん幻で現実の痛みを打ちはらうことはできない!
八宝斎
"地の巻"だけはおぬしに見せとうなかった。それをしるは、幻術をいとおしみ幻術に生きるおぬしに、死ねというようなものじゃ。
・・・・・・
肉丸
魔子ちゃん。帰ろうね…
魔子
や…やめて。死んじゃう……
肉丸くんが死んじゃう!!
・・・・・・
魔子
もしかして幻術はたまたまきっかけにすぎなくて……
あれが本当のあたしの姿だったのかもしれないのよ…!
あたし…いつまでたっても肉丸くんに苦労かけることしかできない…
肉丸
でもぼくは……
そういう魔子ちゃんがいてくれないとダメなんだ。
ナレーション
今日はきのうの繰り返しかもしれないけれど……
あしたは今日の繰り返しかもしれないけれど……
それでもおぼえていこう、ひとつひとつ……
やさしさも…
かなしさも…
また一日がはじまる---
blog移転
いつもいくネットカフェでのblog編集に問題がなさそうなので、Bloggerからはてなブログへ移転することにしました。
昔のblogはこちら => http://takabsd.blogspot.jp/
細野不二彦『GU-GUガンモ』最終回
やっぱりこれにかなう最終回はない。
半平太 : 今日もパンにコーヒーか。あいつにやったらさぞ喜ぶだろうに。 姉 : 誰さ、あいつって? 半平太 : えっとぉー!?アレ?誰だっけ? 姉 : 半平太?ちょっとあんた…なに泣いんてんのよ、気持ち悪い! 半平太 : あ、イヤ…オレべつに…アレ……?ど、どうなってんのかな、アレ…? なんでもないのにコーヒーの香りをかいだら、急に胸が苦しくなって…… へんだね、オレ? 想い出は夢のごとく… 遠く色褪せてゆく一瞬の少年の日… 昔の友はその名もとどめず… されど、今一度飲みかわさん… カップ一杯のノスタルジアとともにーー
江戸川乱歩『押絵と旅する男』
昔のblogのarticle(2005-1/23)のrepost.
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10年ぶりに読んだ.
10年前同様、読むと映像が鮮明に頭に浮かぶ。
映画になるために生まれたような作品だ.
語り手は役所広司ってのは10年前に思いついたんだけど、"押絵と旅する男"が誰がいいか浮かばなかった.
でも今回読んで"押絵と旅する男"は、緒形拳が頭に浮かんだ。"押絵と旅する男"の兄は、袴田吉彦.
脚本は小説の文そのままでいい。
役所広司が小説の文章を読む。途中の会話を話してる方じゃなく話を聞いてる方の顔を映す.
下手に話を膨らますことなく、小説の文章だけでいい。
ゆっくり撮っていっても1時間ぐらいの作品にしかならないけど、
- 冒頭の蜃気楼、
- 語り手が初めて押絵を見るところ、
- 男の兄が押絵の中に入るシーン、
- 最後ホームの闇の中に男が消えていくシーン、
これだけ印象的なシーンがあれば映画として成り立つ.
こんなに映画向きの小説はないんじゃないか.
それだけじゃなく、この作品は私には乱歩作品の中では傑出した出来だと思う.
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悲しい気分でジョーク
昔のblogのarticle(2005年11月か12月)のrepost.
この文章もたしか、22歳の春、大学4年の時、ある出版社への就職の応募書類に書いたものだったと思う。
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大学生の頃書いた感想をそのまま記載します。
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一番心に残っている映画は、ビートたけし主演の"悲しい気分でジョーク"。
もう10年以上前の映画だと思うけれど、今でもラストの場面を思い出すだけでせつない気持ちになってしまう。
人気絶頂のコメディアンが息子の病気をなんとか治そうと一所懸命になる。そのため段々人気も落ちて、周りの人も離れていく。そして最後には息子も死んでしまう。
そんな憐れとしかいいようのない物語だけど、その中での不器用ながらも一所懸命に息子を愛する父、そんな父の気持ちを思いやる息子、この 2人の気持ちが痛いほど心に突き刺さる。
結局 2人は何もむくわれることはないのだけれど、この2人のお互いを思う気持ちの深さは、十年以上経った今でも心の奥に残っている。
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この文章を書いた時には、1985年よりもっと前に上映されたと感じてる。思い違いだったのかなあ....
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22歳の時に書いた夢枕獏作品が好きな理由
昔のblogのarticle(?)のrepost.
22歳の春、大学4年の時、ある出版社への就職の応募書類に書いた文章。
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最も影響を受けた本は、夢枕獏さんの描く物語だ.
彼の本の中から一冊を選ぶのは難しいが、あえてあげるなら「キマイラ・吼」シリーズだ.
物語の面白さは当然だけど、読み終わった後に何かしらのenergyを与えてくれる.
それは物語の中の登場人物が正に「生きている」からだ.
それぞれが完璧でなく、心の内に欲や執念、そして弱さを持っている.
そんな彼らが心の葛藤を繰り返しながら生きていく、そんな様(さま)がrealに、そしてsimpleに描き出されている.
そしてその欲や執念といったドロドロしたものを全て肯定してくれる.
人間は思うように生きてよい、そんなsimpleな答えを与えてくれる.
ドロドロしたものが、時に素晴らしく美しい情景の中に描き出される.
山のせせらぎの澄んだ水の中に一滴の血が溶けていく、そんな美しさがある.
今まで書いてきたことは、獏さんの全ての物語に共通することだけど、その要素が一番盛り込まれているのがこの「キマイラ・吼」シリーズだ.
とにかく獏さんの物語は面白く、不思議な活力を与えてくれる.
だから心にポッカリと空洞が出来た時、ダラダラとマンネリな生活が続いている時、私は彼の本を読んで気合を入れ直すのだ.
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