江戸川乱歩『押絵と旅する男』
昔のblogのarticle(2005-1/23)のrepost.
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10年ぶりに読んだ.
10年前同様、読むと映像が鮮明に頭に浮かぶ。
映画になるために生まれたような作品だ.
語り手は役所広司ってのは10年前に思いついたんだけど、"押絵と旅する男"が誰がいいか浮かばなかった.
でも今回読んで"押絵と旅する男"は、緒形拳が頭に浮かんだ。"押絵と旅する男"の兄は、袴田吉彦.
脚本は小説の文そのままでいい。
役所広司が小説の文章を読む。途中の会話を話してる方じゃなく話を聞いてる方の顔を映す.
下手に話を膨らますことなく、小説の文章だけでいい。
ゆっくり撮っていっても1時間ぐらいの作品にしかならないけど、
- 冒頭の蜃気楼、
- 語り手が初めて押絵を見るところ、
- 男の兄が押絵の中に入るシーン、
- 最後ホームの闇の中に男が消えていくシーン、
これだけ印象的なシーンがあれば映画として成り立つ.
こんなに映画向きの小説はないんじゃないか.
それだけじゃなく、この作品は私には乱歩作品の中では傑出した出来だと思う.
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